Twitterでオススメされた漫画のレビューです。
ネタバレあるので未読の方は注意してください。
勇者パーティーが魔王を倒して、その後のお話
登場キャラクター達は流行りの異世界ファンタジーでもお馴染みの種族ですが、今回はエルフのフリーレンが主人公です。
- フリーレン(主人公)：ご長寿エルフ。数千歳？
- ヒンメル：人間の勇者。フリーレンに好意を抱いていた？
- ハイター：人間の僧侶。酒好き僧侶。
- アイゼン：やや長寿のドワーフ。人間よりやや長寿。
魔王を打ち倒して、解散してそれぞれの道を歩み始めた勇者パーティー。
そんな4人のうちの1人、フリーレンの視点の漫画です。
すでに数千年生きてきたエルフのフリーレンの飄々と達観したような性格のように、ストーリーも淡々と進んでいきます。
「じゃあ次。50年後。」
パーティー解散時に50年に一度の流星群が来ており「今度はもっと見える場所に案内するから」とフリーレンがなんとなく発した言葉です。
勇者ヒンメルは少し笑って「そうだな、皆で見よう」と返します。
冒頭のストーリーでエルフと他の種族での時間感覚のズレを明確にしたシーンです。
この感覚のズレが、今後のストーリーの背景にすっと付いてまわります。
勇者ヒンメルの死
50年後、パーティーは再開を果たし約束の流星群を見に行きます。
見た目が全く変わらないフリーレンに対し、当然人間の勇者ヒンメル、僧侶ハイターは50年の歳を重ね見るからに老人になっています。
ドワーフのアイゼンはヒゲと服装で見た目にはわかりにくいですが、もう斧なんて振れないほどに腕は細くなっています。
みんなで感動的に流星群を見た後、ほどなくして勇者ヒンメルは天寿を全うし盛大なセレモニーが行われました。
その最中、全く表情を変えないフリーレンに対し参列者から
「悲しい顔ひとつしないなんて薄情だ」
と言わてしまいます。
数千年を生きるフリーレンには、たった10年しか一緒にいない人間のことなどほとんど知らないのが当たり前だったのですが「人間の寿命が短いことを知っていたのに、なぜもっと知ろうと思わなかったのか」と涙を流します。
数千年のエルフの死生観に、勇者との10年間が変革を起こしたシーンです。
とは言え少しの気付きでフリーレンの全てが変わることはなく、ご長寿ならではの発言はこの後も続いていきます。
ヒンメルの像
勇者一行は魔王討伐の旅路で各地の街や村を救い、その都度感謝され記念の像を造ってもらったり、造らせたりしています。
ヒンメルは自らをイケメンと自負しており、後世にそのイケメンぶりを伝えるべくポージングに時間をかけたり像の作り直しをさせたりとパーティーにも呆れられているくらいでした。
ある時、
フリーレン「よく像をつくってもらっているよね。」
ヒンメル「皆に覚えていてほしいと思ってね。」
それを聞いて呆れ気味に去ろうとするフリーレンに
ヒンメル「君が未来で一人ぼっちにならないようにするためかな。」
フリーレン「何それ。」
キザったらしいセリフですが、ヒンメルは第一話の魔王討伐後の時からフリーレンの今後の長い人生の事をよく口にしていました。本当はこっちが本心なのでしょう。
事実この回以後もヒンメルの像に出くわす機会があり、都度ヒンメルはじめパーティーで旅をしていた事を思い出すことになります。
ただ、ヒンメルが本当に伝えたかった事が全ては伝わっていないようですが･･･そのあたりは今後明らかになるのでしょう。
それぞれの死生観
まだ勇者パーティーで魔王討伐の旅をしていた頃、ドワーフのアイゼンの故郷に立ち寄ることがありました。
アイゼンの妻は魔族に襲われ亡くなっており墓標が残るのみです。
墓標に祈りを捧げる僧侶ハイターに対し、アイゼンは「何をしている？」と聞きます。
ドワーフには死後の世界の概念はなく「死んだら無に還る」と考えているためです。
(数千年前までは無に還るのが常識だった。そしてドワーフは伝統を重んじる。)
ハイター「人は死んだら天国に行きます。」
フリーレン「懐疑的だけど証明はできないんだよね。」
ヒンメル「どっちでもいいと思う。」
↓
ハイター「私も実在するかはどっちでもいいと思います。その方が都合がいいですから。」
と、自分で天国の話題を出したのに生臭坊主らしい返事をします。
しかし続けて「必死で生きてきた人が行きつく先が無であっていいはずがありません。だったら天国で贅沢三昧してると思った方が良いじゃないですか。」
普段なら酒好き生臭坊主の希望的観測のようなセリフですが、このタイミングではアイゼンの妻の死後を本当に思っての事のように感じます。
その間アイゼンはほとんど表情も変えず言葉を発しません。
ヒンメル「たしかに都合が良い。祈るか。」
アイゼン「ああ。」
その一言だけ発して。たぶん初めて祈りました。
ハイターの言う死後の考え方をどう感じていたかはわかりませんが、たった一コマだけ50年経って細くなった腕で祈るシーンがあります。
フリーレンがヒンメルの死に何か感じたように、アイゼンにも変化があったようです。
伝統よりも、妻の死後をの幸せを祈りたくなったんでしょう。
ゆっくりと小さなコマの機微を楽しむ
ここまで紹介したものはだいたい2巻までに収録されている内容の抜粋です。
巨大なドラゴン退治なのようなハラハラするような大きなイベントはなく1~2話程度毎に一つのストーリーが完結していきます。
サクサク読み進めるというよりは、それぞれのキャラクターの心理描写を読み取る楽しさがあるマンガです。
生きることは遅かれ早かれ死に向かうことですが、その考え方が少し優しくなれるなと思いました。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
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